当たり屋の子はストーリーな女たちシリーズで掲載された読み切り作品。表題タイトルの漫画にもなっており各電子書籍ストアで購入が可能。中身は表題タイトルに加えて他3作品が収録されている内容になっています。
これ、結末が不憫すぎて泣ける漫画かも…。
作品の舞台は昭和40年代、四国某県。大人の男性の手に引かれて幼い子供が急に道路へ飛び出す。
「いいかぁ…」
「いけっ」
走ってくる車と間一髪の所で子供は身を捻って接触を避ける。車に当たらなかった子供に対して大人の男性は子供に暴力。
「なんでいかねんだよ」
「このグズが!」
泣く子供も慰める母親が登場。母親も次はちゃんと出来るわよね…と狂った発言をかます。
子供の名前は洋。母親は敏江。そして子供に当たり屋をさせる男:リョウジは母親の彼氏のような存在であった。
翌日、再びリョウジは洋に当たり屋の仕事をさせる。今度は上手くいって車に轢かれてしまう。幸い外傷は擦り傷だけで大きな怪我はなかった。
医者も安心しきったような表情であったが、リョウジは洋にアイコンタクトを取ると洋が急に頭が痛いと叫び出す。
「大事な息子を殺されかけてよ、こんなモンで納得できっか?」
「すみません…しかし、手持ちはこれだけなんです」
そういって示談を済ませて謝礼金を受け取るリョウジ。
洋に向かってもっと上手い演技をして痛がれと説教をしだす。示談金を見ると、それなりの金額が入っており、外食をすることに…。しかし、呼ばれたのは敏江だけ。洋は家に帰ってろと言われてしまう。
再び当たり屋をやる洋。
そこへ警察官が駆けつけてくる。しかし、洋を見た瞬間に見覚えが。それは昨日起きた事故も帽子を被っていた子だと報告が入っていた。
「もういい!」
「いくぞ!」
「はやくこい!」
そういってリョウジは洋や敏江を呼び、そそくさと現場を後にする。
その夜、洋たちは夜行列車に乗って夜逃げ同然で街を飛び出す。理由は警察に疑われだしたから。
目的地に到着すると旅館へチェックイン。
旅館に到着すると1人の同世代くらいの少女に目を奪われる洋。
彼女は旅館を経営する家族の娘:ユリエ。バイオリンを片手にお手伝いと他愛もない会話をしていた。そしてユリエは洋に気づいて軽く会釈をする。
その夜、リョウジと敏江は翌日の当たり屋仕事の現場の下見に行くと言って出掛ける。洋は旅館の中を徘徊。裏口から出るとユリエの友達が給食を持ってきていた。
洋を旅館の息子と勘違いした友達は給食を洋に預けて立ち去る。
美味しそうな匂いのする給食にたまらず封を切って食べてしまう洋。そこへユリエが背後から登場。全部食べていいよと言い、さらに洋を自分の部屋に連れていき、お菓子などを振る舞う。
その後、ユリエの父親が登場して夕食までお世話になる洋。
贅沢な食事に爆食いをして、ふと横目でユリエの父親を見ると可哀想な子供を見つめるような哀れんだ視線を送っていた。
部屋に戻ると仕事の為にビタミン剤を注射される洋。アザのような打撲跡が出来て、ちょっと当てただけで大怪我に見えるといった仕掛けだ。
翌日、リョウジは警察に目を付けられたような勘が働き、午前中にひと稼ぎして、この地を離れる計画を立てる。そして洋の当たり屋としての仕事。
今回は打ちどころが悪く腕を骨折。同時にユリエもその現場を目撃していた。
洋の母親とリョウジは警察に逮捕。病院でユリエが洋を慰める。
「もう平気よ、悪いお父さんもお母さんもおまわりさんに捕まったから」
「僕が悪いんだ」
「お父さん、お母さんも悪くないんだ」
「僕が悪いんです」
泣きながら側にいた警察官に訴える洋。
なんとも悲しい結末。
親の愛情が自分に向かないのは自分が悪いと思ってしまっている洋。
これ、続きはあるのだろうか…
このままじゃ洋が不憫過ぎて可哀想過ぎる結末だ。是非、続編が出て幸せになる洋を描いて欲しいと感じた作品だった。